「コミック版」
『コミック 文体練習』 マット・マドン 国書刊行会
現在の生活の方が、以前のそれよりも本に近いようで実は遠いというのが良くわかる。
1年前までならこういう本はまず見逃していない。
レーモン・クノーの『文体練習』は、メチャメチャにおもしろい本だったが、このコミック版もなかなかのものだ。
バリエーションが全部で99通りなのも「原典」通り。雛形となるのが何の変哲もないエピソードなのも「原典」と一緒だ。ただ、コミック版の方のそれにはオチらしきものがついている(つまりまがりなりにもコミックとしてひとつの作品になっている)のに対し、「原典」の方はもっとニュートラルで、単独では成立しない文章である分、「練習」の果敢さがより引き立つ気がする。なにより、クノー(と訳者)の超絶技巧に比べてこのコミック版の作者の技巧は、たぶん一段も二段も落ちる。
しかしまあ、思いついたもん勝ちということで。
充分に楽しみました。何回か読み返しているが、そのたびに新しい発見がある。
こういう場合の権利関係がどうなるのかはよく知らないが、日本ではできれば寺田克也あたりに同じことをやってもらいたい。古屋兎丸でも可。つーか、こういうのきっと好きだと思う、2人とも。
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