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2006-01-31

水の都市

 というわけで、遅れてきた記事シリーズ第一弾。多分書店に並んだその日に買って、翌日には読み終えていたのに、その週末にはブログに書こうと思っていた矢先にADSLモデムが昇天し、実に悔しい思いをした1冊。

『アクアポリスQ』 津原泰水 朝日新聞社

 仕事帰りに書店で見つけて即購入、息つく間もなく読み終えた。
 津原泰水史上(津原やすみ時代を除く)もっともイージーリーディング。その分、津原泰水特有の、一行一行、ひと言ひと言ごとにぐいぐいと心臓を鷲掴みにされていくような感じはないが、さすがにうまい。
 いわゆるライト・ノヴェルのノリというのか、「運命に立ち向かう」的な主人公の「決意」の表現が真っ直ぐ過ぎて少しむずがゆいが、200ページ足らずの短い物語が、きちんと盛り上がってきちんと決着する。
 いや「きちんと」というのはおかしいか。シリーズ化を前提としたような書き方なので、「きちんと」は終わっていない。謎もたくさん残っている。

 この作品は、徳間書店の「SF Japan」誌上でスタートしたと思ったらどうやらすぐに空中分解してしまった企画「憑依都市」の一環として、当初は構想されたもののようだ。「憑依都市」は、大半が水没してしまった架空の都市「Q市」を舞台に、複数の作家が共通の設定でおのおの小説を書いていく、いわゆるシェアード・ワールド小説の企画で、津原泰水は企画発案者の1人だった。その「憑依都市」をめぐる権利関係が現在どうなっているのかはよく分からないが、「アクアポリスQ」ではたぶん「憑依都市」の設定がそのまま使われている(件の「SF Japan」2004年冬季号は買ったが、ざっとしか目を通していないので良く分からない)。
 そういうわけで、本書はこれまでの津原作品とはずいぶん手触りが違う。それでも津原印はあちこちに刻印されている。
 本筋とは関係ないが、喫茶「あみん」ネタには笑った。こういう、危ういところをギリギリで見切っていけるあたりもカッコイイ。

 いつもの津原泰水の超絶技巧を期待する向きにはちょっと物足りないかもしれないが、それでも普通にスタイリッシュです。

 評価は、津原作品に対しては珍しい★★★★。星ひとつは、今後の「アクアポリス」ものの展開に期待してとっておく、ということで。

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