« 珠玉 | トップページ | 買った本 »

2005-12-21

いいぞ、ラファティ

読了本。

gendaisf 『現代SF1500冊 回天編 1996‐2005』 大森望 太田出版

 前作『乱闘編』が1975~1995年の20年間を対象範囲としたのに対し、今回は10年間なのに分量は100ページ増。さすがのヴォリュームだが、さくさく読める。
 作品ごとに★★★★★を満点とする評価がついていいるが、既読の作品への自分の評価と引き比べてみると、概ね頷ける点数がついているので、信頼できるブックガイドともなる。付箋を貼りながら読んで、あとで整理したら未読の要チェック本がたくさん出てきて困った。
 なにより、通読すると本当に1997~98年は「SF冬の時代」であったことが良く分かる。大体、僕自身あまりSFを読んでいなかったことが如実にわかる。まあ、日本SFに関していえば、僕はもう長いこと(数少ない例外を除いて)読んでおらず、ハヤカワSFシリーズJコレクションと小林泰三によって、それこそ30年ぶりに腰をすえて日本SFを読むようになったといってもよいのだが。
 大森望の書評は、肩肘張らず、馴れすぎず、まとめて読んでも飽きがこない。うまい表現があって、あちこちで膝を打った。
 そんな中からひとつだけ紹介。

 「ハイテクをストリートレベルで描いたのがギブスンなら、イーガンは科学理論をストリートレベルで描いている」(264ページ)

 アップに手間取るうちに、もう1冊読了。
ra 『宇宙舟歌』 R・A・ラファティ/柳下毅一郎訳 国書刊行会

 ラファティがどんなにユニークな作家かということは、ラファティを読んだことのある人には今さら僕が説明するまでもないし、ラファティをご存知ない方にそのユニークさを伝える表現力は僕にはないが、本当に好きな作家の1人だ。
 ただ、基本的には短編の作家だと思っていて、短編集『九百人のお祖母さん』などは、これまでに読んだもっとも好きな本の一つだ(いま調べたら、Amazonでもbk1でも品切れ。ひょっとして絶版? 『どろぼう熊の惑星』は残っているのに? 考えられない)。
 だけど、長編はあまりおもしろいと思ったことがない。というか、部分的にえらく感心してもそれらの印象がバラバラで作品トータルとして像を結ばない。そもそも作品の結構を緻密に考えるようなところからは最も遠いところにいる作家だと思っていたのだが…。
 この『宇宙舟歌』はとても良いです。
 宇宙で10年間にわたって続いた戦争のあと、家路についた男たちの物語。要するに『オデュッセイア』の再話だが、その冒険の奇怪さ、天衣無縫ぶりが天才ラファティの天才たる所以。オデュッセウスの冒険をなぞりながらもいつの間にかヘラクレスとアトラスの物語が混じりこんだり、果ては北欧神話も持ち出して、どこまでも楽しい。
 ラファテイの作品の中ではわかりやすい部類に属すると思うが、題材からいってジョイス『ユリシーズ』を意識していることは間違いなく、そのあたりが匂ってくる部分もある(いや、ジョイスを読んで理解する能力も気力も持たない僕には、実際はよく分からないのだが)。一筋縄ではいかないのだろうなと思わせながら、そこはラファティ、表面をなでるだけの読み方でも十分に楽しい。
 とぼけたオヤジである。

 ラファティを最初に読むなら、本書か『九百人のお祖母さん』を強く推薦。『九百人お祖母さん』が手に入らない状況を、早川書房は早急に何とかしていただきたい。短編SFがブームでもあることだし。

評価は
『現代SF1500冊 回天編』  ★★★★
『宇宙舟歌』  ★★★★★

|

« 珠玉 | トップページ | 買った本 »

「本を読んだ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/126122/7702073

この記事へのトラックバック一覧です: いいぞ、ラファティ:

« 珠玉 | トップページ | 買った本 »