« 体重計はどうも怪しい | トップページ | 『アメリカの鱒釣り』 リチャード・ブローティガン »

2005-10-30

『啓示空間』 アレステア・レナルズ

 巻頭に妙なイラストがついていて違和感があったのだが、帯で「本年度ベスト1のSFだ!」と、エクスクラメーション・マーク付で言われてしまっては、読まないわけにはいくまい。

 読み終わってみればそれなりの話ではあったけれども、はたして1000ページ超という長さに見合ったものであったかどうか…。
 それと、(作者ではなく早川書房が)どういう読者層をターゲットにしようとしているのかよく分からない。
 二ないし三分冊にせず、このボリュームのものをハヤカワ文庫に似合わず一巻本で出したこと、カバーデザインやカバーイラストの他のハヤカワ文庫SFには見られない肌触り、巻頭イラストの件など、なんとなくチグハグな感じをあたえることどもが、読み終わって内容と照らし合わせて考えると、何となく納得がいくような感じ、と言おうか。

 カバーに記された「著者紹介」によれば、イギリス本国では処女長編となる本書が評判を呼び、その続編の「Chasm City」が「英国SF協会賞」を受賞したというから、おそらく僕の評価は客観的にみて信頼の置けないものである可能性が高いが、そのつもりでお読みいただくとして…。

 多分、結末に明らかになるSF的アイディアがそもそものコアにあって、それを語るためにどのようにストーリーを結び付けていくかという思考法で組み立てられたタイプのSFだと思うが、そのアイディアそのものはそれなりのインパクトがあるとしても、どうにも語り方が不器用だ。

 あまり揚げ足を取るようなことはいいたくないが、人物の行動や社会の動きに説得力を持たせるための神経が行き届いていないのだ。具体的に例をあげれば181ページの最初の2行の記述などには、ちょっと驚かされる。

 そして、謎の隠し方がうまくない。説明してしかるべきと思うところで説明をせずに話を進めるような箇所が随所に見られるが、説明が行われるのは、その事柄をめぐる状況が煮詰まり切った時点なので(つまり、ストーリー展開の上からそれ以上説明を遅らせるわけには行かなくなってからなので)、逆に緊迫感が削がれてしまう。これでは、何のために語る順序を入れ替えたか分からない。

 語りが不器用なSFというのはそれこそ山ほどあって、それでもそのSFをSFたらしめている何ものかが優れているために、輝きを放っているSFもたくさんある。
 SFであるからには、小説として未熟であるというようなことを貶し言葉として使ってはならないとも思うが、この作品に限って言えばSFとしても50年古いなぁ、と。

 評価は★★

『啓示空間』 アレステア・レナルズ/中原尚哉訳 ハヤカワ文庫SF 

|

« 体重計はどうも怪しい | トップページ | 『アメリカの鱒釣り』 リチャード・ブローティガン »

「本を読んだ」カテゴリの記事

コメント

>> カバーデザインやカバーイラストの他のハヤカワ文庫SFには見られない肌触り、巻頭イラストの件など・・・

ああ、それはmaimai氏がハヤカワの最近のスペオペやエピックファンタシィ物を無意識的に視野から外してるからでしょ(笑)。ここんとこわしら年寄りには、本当に「かんべんしてくれ」と言いたい表紙やイラスト入りものが出てますよ(本文中挿画は電車で恥ずかしいぞ)。でもそれで手に取る人が本当にいるんでしょうかねぇ?(その逆はいそうだが)

しかしとうとう「厚さ」まで広告手段に利用するとは・・・。
まあ何にせよハヤカワSF文庫が売れて欲しいと言う思いはあるので、強くは否定しないが・・・。

投稿: FaianchCha | 2005-10-31 10:25

そうだ、ハヤカワはいっその事、翻訳はやめて全て漫画化で海外SFを出版すればいいんじゃん、しかもそれなら海外へ逆輸出できるぞ(頼むからヤメて・・・)。

投稿: FaianchCha | 2005-10-31 10:33

ま、上の二つの発言は、娘が産まれた時に本気で自分の娘に「ミンキーモモ」(ただの「モモ」ちゃんじゃなくて、フルネームの「ミンキーモモ」)と名付けようとして妻に泣きながら反対されたような奴が言った発言として受け止めるとなかなかに趣が深い(笑)。

投稿: 未読王 | 2005-10-31 11:44

いや「モモ」ならエンデだと言い張れる(既に映画のおかげで知名度大)、もしくは「百」で百恵ファンだったと言い逃れる(決して「百式」じゃない←未読王さんには通じないだろうなぁ)と言うとこまでは譲歩したんですが・・・。

まあ、まんまと奥さんを騙して「ときメモ」にしてしまったmaimai氏には脱帽(笑←とフォローしておこう)。

投稿: FaianchCha | 2005-10-31 12:34

>娘が産まれた時に本気で自分の娘に「ミンキーモモ」(ただの「モモ」ちゃんじゃなくて、フルネームの「ミンキーモモ」)と名付けようとして

 またまた未読王さんのいつものギャグ炸裂だぁ、いくらFaianchChaさんでもそれはないだろ、と思ったら、

>いや「モモ」ならエンデだと言い張れる……
>と言うとこまでは譲歩したんですが・・・。

「譲歩した」って、一瞬でも“フルネーム”でいこうとしたんかい?

>まんまと奥さんを騙して「ときメモ」にしてしまったmaimai氏

 ホント人聞きが悪いからやめてよ。アタシゃ「ときメモ」なんて知りません(いや、知りませんでした、FaianchChaさんに教えてもらうまでは)。やったことありません。

 それと、「百式」って何?

投稿: maimai | 2005-10-31 18:47

あんたら、外の世界で何やってんの・・・。(唖然)

投稿: | 2005-11-03 21:57

ごめん。
お2人の娘さんが可哀想なあまり、また無記名やっちまった。

投稿: 牛乳屋 | 2005-11-03 22:09

>あんたら、外の世界で何やってんの・・・。(唖然)

あたかも「内の世界」というものがあって、普段はそこで牛乳屋さんやFaianchChaさんと一緒になって、「ときメモ」やら「ミンキーモモ」「仮面ライダー・ホニャララ(よくわからん)」やらに惑溺しているかのごとき、誤解を与える発言は、厳に謹んでくれたまえ。

投稿: maimai | 2005-11-04 18:09

maimaiさま

>普段はそこで牛乳屋さんやFaianchChaさんと一緒になって、「ときメモ」やら「ミンキーモモ」「仮面ライダー・ホニャララ(よくわからん)」やらに惑溺しているかのごとき、誤解を与える発言は

って、それは、「誤解」ですか?(汗)
maimaiさまは、とても不思議で、イメージがなかなか結べませんよ。(^^;)
そのせいか、「そうか~」と納得しかけたのですが、それって、正しく「誤解」の像?(大汗)

投稿: 月光院 | 2005-11-15 18:28

月光院さま

>って、それは、「誤解」ですか?

誤解です(キッパリ)。

>maimaiさまは、とても不思議で、イメージがなかなか結べませんよ。(^^;)

そうですねぇ。ソフトに「不思議」とおっしゃっていただきましたが、ネット上の発言でのスタンスの取り方というのが私は苦手のようです。そのため知らず知らずのうちに「イメージの結びにくい」キャラクターになっているかもしれない。
それと、ネット上の発言ではいくつか制限をかけて、特定の範疇の事柄についての言及は避けるようにしています。これはもちろん意識的にそうしているのだけれど、「なぜ」と問われれば、たぶんこの、「苦手」がその奥にあるのではないか、と。

上欄にコメントしてくれたFaianchChaさんも牛乳屋さんも、そして一部では有名な未読王さんも、大学で同じクラブに所属していまして、そこはミステリやらSFやらを好きなものの集まりでした。
上記コメント合戦は、その仲間うちのじゃれ合いみたいなものです。
そのクラブの会員だった者にも色々な趣味がありまして、FaianchChaさんや牛乳屋さんは、私などは想像もつかない濃ゆーい世界に、当時から棲息していました(笑)。

私自身について言えば、子どものころはSF少年で、それ以外の書物を読みませんでした。上記クラブに所属していた大学時代は、さすがにそういうわけにはいきませんが、それでも読むものの半分以上はSFでしたね。
現在はその比率がだいぶ小さくなり、自分が「SF者」であるかどうか、もはや自信はありませんが、現在私が小説やら、映画、マンガ、あるいは稀に音楽やら絵画やら、いろいろなものを受容する際の態度というかスタンスの根本にはやはりSFがあるのだろうと思っています。

だから、「内の世界」はそういう意味では存在します。FaianchChaさんや牛乳屋さんが「内」で話していることは、ディテールはよく分からないとしても空気は分かりますし…。私も全くその世界に属していないかというと、ホンのちょっとは属している。
だけどホントにホンのちょっとです。
「ときメモ」だの「ミンキーモモ」だのは、断じて知らん!!! ガンプラを買ったことは2回しかない!!!

投稿: maimai | 2005-11-16 13:59

なんか一生懸命言い訳している人がいるけど・・・。

投稿: 牛乳屋 | 2005-11-19 08:56

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/126122/6746455

この記事へのトラックバック一覧です: 『啓示空間』 アレステア・レナルズ:

« 体重計はどうも怪しい | トップページ | 『アメリカの鱒釣り』 リチャード・ブローティガン »