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2005-09-15

『宇宙の果てのレストラン』

 というわけで、読みました。『銀河ヒッチハイク・ガイド』(河出文庫版)第2弾。

 『宇宙の果てのレストラン』(ダグラス・アダムズ著/安原和見訳 河出文庫)

 あ~ おもしろかった。堪能いたしました。

 ダグラス・アダムズがこのシリーズで書いたのは、哲学法螺話、世界観法螺話で、それなりに一貫したストーリーはあるが、物語を進めていくのは、全編にちりばめられた、おバカとも知的とも言いくるめることができそうなギャグ。「価値体系ギャグ」とでも呼んでみようか。

 主人公は第1作で、故郷の惑星(つまり地球)を一瞬のうちに失い、親友(実は宇宙人だった)に言われるままに宇宙に飛びだす。それが物語の発端で、あとはへんてこな生物やらへんてこな価値観やらへんてこな科学技術やらに引きずりまわされて、へんてこな宇宙のあちこちを旅する、というのが、詰まるところ物語の骨子。

 たとえば…。

 地球上で一番賢かったのは、自分で思っているほど賢くない人類には知るべくもなかったが実はネズミで、その次がイルカ(この辺がイギリス的)、人間は三番目だった。イルカは地球の破滅が近づいていることを以前から知っていて、そのことを人間に伝えようとしていたが、コミュニケーションがうまくいかず、人間はイルカが魚ほしさに芸をやっていると思っていた。

 あるいは…。

 超巨大コンピュータが、それを作った超越的な種族から「生命、宇宙、そのすべて」についての究極の答えを出せと命じられ、750万年かけて計算した答えが「42」だった。超越的種族が答えの意味が分からないと言うと、コンピュータいわく「それは、あなたたちが問いの意味を理解していないからだ」。

 いまさらカート・ヴォネガットとの類似を云々するのは、言ってしまえば20数年遅いわけだが、こういう、ヴォネガットが(というより、ヴォネガットの作品に登場する三文作家キルゴア・トラウトが)書きそうなエピソードが、それこそ、次から次へと繰り出される。

 ヴォネガットとの一番の違いは、作品がほとんどこうしたギャグの連射のみによって成り立っていることで、これでは作者はやめる潮時が分からない。好評である間は求めに応じて何冊でも書き継いでいってしまうだろう。

 シリーズ1・2作目に関していえば、レヴェルは保たれているが、早くも2作目である本書の終盤では息切れの兆しが見える。今になって思い出したが、そういえばかつて新潮文庫版で読んだときも、3冊目は急につまらなくなったような気がする(笑)。

 イギリス本国では5作目まで出たとのことだが、一旦は3作目を完結編として出しながら、その後になって2冊を出したので、「5冊からなる3部作」などと呼ばれているとのこと。価値観ギャグだけに特化せずに小出しにギャグを使ってゆっくりと失速していったヴォネガットの軌跡を、ダグラス・アダムズは早回しで辿った、と言ってみることも可能だろうし、所詮アダムズはヴォネガット的(ブローティガン的と言ってもよいかもしれない)若者文化の消費者であったと言ってしまうことも可能だろう(と、とりあえず無理矢理締め括ってみた)。

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